高血圧の基準は130/80に変わった?2025年ガイドライン改訂と血圧を下げる方法を医師が解説
- 2025年11月23日
- 生活習慣病
2025年8月、日本高血圧学会から「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が発表されました。
「高血圧の基準が130/80mmHgに変わったの?」
「血圧はどこまで下げればいい?」
「薬を飲まずに血圧を下げる方法はある?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
まず大切なのは、
高血圧の「診断基準」はこれまでと変わっていない
ということです。
- 診察室血圧:140/90mmHg以上
- 家庭血圧:135/85mmHg以上
が高血圧の診断基準です。
一方、高血圧と診断された方が治療によって目指す「降圧目標」は、原則として
- 診察室血圧:130/80mmHg未満
- 家庭血圧:125/75mmHg未満
となりました。
つまり、今回の改訂で重要なのは、
「130/80mmHgを超えたら高血圧になった」のではなく、「高血圧の方は、安全に配慮しながら130/80mmHg未満を目指す」
という点です。
高血圧はほとんど症状がない一方、長期間続くと脳卒中・心臓病・腎臓病などのリスクを高めます。
この記事では、2025年の新しい高血圧ガイドラインをもとに、
- 高血圧の基準はどうなったのか
- 血圧はどこまで下げればよいのか
- 家庭血圧はどう測ればよいのか
- 血圧を下げるために何をすればよいのか
- 血圧の薬はいつから必要なのか
について、わかりやすく解説します。
①2025年の高血圧ガイドラインは何が変わった?
日本高血圧学会が改定した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、治療だけでなく、予防・生活習慣の改善・家庭血圧を含めた日々の血圧管理がこれまで以上に重視されています。
特に知っておきたいポイントは次の3つです。
1.高血圧の診断基準は変わっていません
高血圧と診断する基準は、
診察室血圧:140/90mmHg以上
家庭血圧:135/85mmHg以上
で、これまでと変わりません。
「130/80mmHgを超えたら高血圧」という意味ではありません。
2.治療中の目標血圧は原則130/80mmHg未満へ
高血圧と診断された方が治療によって目指す血圧は、原則として
診察室血圧:130/80mmHg未満
家庭血圧:125/75mmHg未満
となりました。
これまでよりもしっかりと血圧を管理することで、将来の脳卒中や心臓病などを減らすことが期待されています。
ただし、血圧は単純に「低ければ低いほどよい」というものではありません。
高齢の方や、血圧を下げることでめまい・ふらつきなどが出る方、持病のある方などでは、体調や治療への反応をみながら目標を調整します。
3.必要な治療を先延ばしにしないことが重要です
減塩や運動などの生活習慣改善は、高血圧治療の基本です。
一方、血圧の高さや、糖尿病・腎臓病・心臓病などのリスクによっては、生活習慣の改善だけで長期間様子を見るのではなく、必要に応じて薬による治療を開始することも大切です。
高血圧の診断基準」と「治療目標」は違います
今回のガイドライン改訂で特に混同しやすいのが、
「140/90」と「130/80」の違い
です。
整理すると次のようになります。
| 診察室血圧 | 家庭血圧 | |
|---|---|---|
| 高血圧の診断基準 | 140/90mmHg以上 | 135/85mmHg以上 |
| 高血圧治療中の目標 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
つまり、
140/90mmHgは「高血圧かどうかを判断する基準」
130/80mmHgは「高血圧の方が治療で目指す目標」
と考えるとわかりやすいでしょう。
②高血圧では「家庭血圧」がとても重要です
高血圧の診療では、病院で測る血圧だけでなく、自宅で測る「家庭血圧」が非常に重要です。
家庭血圧は、診察室よりも普段の生活に近い状態の血圧を知ることができます。
病院では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」がある一方で、病院では正常でも自宅では血圧が高い「仮面高血圧」もあります。
そのため、診察室で一度測った血圧だけでは、普段の血圧を正確に判断できないことがあります。
特に重要なのが朝の血圧です。
家庭血圧のおすすめの測り方
朝
- 起床後1時間以内
- 排尿後
- 朝食前
- 血圧の薬を飲む前
- 座って1〜2分安静にしてから測定
夜
- 就寝前
- 座って1〜2分安静にしてから測定
1回の測定機会につき、原則として2回測定して記録します。
血圧は毎回まったく同じ数字になるわけではありません。
「今日は高かった」「昨日は低かった」と1回ごとの数字に一喜一憂するよりも、何日か測定した血圧の平均値を見ることが大切です。
1〜2週間程度記録した家庭血圧を診察時に持参していただくと、治療方針を決めるうえで非常に参考になります。
血圧計は、手首式よりも上腕式の家庭血圧計をおすすめします。
③血圧はどのくらいまで下げればいい?
2025年のガイドラインでは、高血圧の方の治療目標は原則として
診察室血圧:130/80mmHg未満
家庭血圧:125/75mmHg未満
です。
「少し高い程度だから大丈夫」と長期間放置するのではなく、適切に血圧を管理することが、将来の脳卒中や心臓病などを予防するために重要です。
ただし、目標血圧は「何が何でも達成しなければならない数字」ではありません。
例えば、
- 血圧を下げるとめまいがする
- 立ち上がったときにふらつく
- 血圧が大きく変動する
- 高齢で転倒の心配がある
- 複数の病気を治療している
といった場合には、血圧の下げ過ぎにも注意する必要があります。
家庭血圧と体調の両方を確認しながら、一人ひとりに合った血圧を目指すことが大切です。
血圧の薬を飲んでいる方も、自己判断で薬を増やしたり減らしたりせず、家庭血圧を記録して主治医と相談しましょう。
④血圧を下げるにはどうすればいい?今日からできる6つの方法
「できれば薬を飲まずに血圧を下げたい」
と相談されることがあります。
血圧の程度によっては薬による治療が必要ですが、薬を飲む・飲まないにかかわらず、生活習慣の改善は高血圧治療の基本です。
特に次の6つを意識してみましょう。
1.まず取り組みたいのは「減塩」です
高血圧の方では、食塩摂取量1日6g未満が目標です。
日本人の食生活では、意識していなくても塩分を多く摂っていることがあります。
例えば、
- 麺類の汁は全部飲まない
- 味噌汁やスープの回数を減らす
- 漬物を食べ過ぎない
- 醤油やソースは「かける」より「つける」
- 出汁・酢・香辛料などを上手に使う
- 減塩食品を利用する
など、できることから始めてみましょう。
すべての食事を急に薄味にするより、毎日の小さな減塩を続けることが大切です。
2.ウォーキングなどの運動を続ける
ウォーキングや速歩、水泳などの有酸素運動は、血圧を下げるために有効です。
目安として、30分程度の運動を週5日程度行うことを目指します。
時間が取れない場合は、最初から30分続けて行う必要はありません。
「10分歩く時間を増やす」など、無理なく続けられることから始めてみましょう。
筋力トレーニングを週2〜3回程度取り入れることもおすすめです。
3.体重を適正範囲に近づける
肥満は血圧が高くなる原因の一つです。
体重が多い方では、少し体重を減らすだけでも血圧の改善が期待できます。
一般的にはBMI 25未満が一つの目安ですが、無理な減量をする必要はありません。
食事や運動を見直しながら、少しずつ適正体重に近づけていきましょう。
4.野菜・果物などを適度に取り入れる
野菜や果物などに多く含まれるカリウムには、ナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる方向に働く作用があります。
野菜、果物、大豆製品などをバランスよく取り入れましょう。
ただし、腎機能が低下している方では、カリウムの摂り過ぎに注意が必要な場合があります。
腎臓病のある方は、自己判断でカリウムを増やさず、主治医にご相談ください。
5.お酒を飲み過ぎない
飲酒量が多いと、血圧が上がりやすくなります。
「毎日飲む」「1回の飲酒量が多い」という方は、飲酒量や休肝日について見直してみましょう。
6.禁煙と十分な睡眠も大切です
喫煙は血管に負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高めます。
高血圧の方には禁煙を強くおすすめします。
また、睡眠不足や不規則な睡眠も血圧に影響します。
十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。
⑤血圧の薬はいつから必要?
血圧の薬を一度飲み始めたら、一生やめられないのでは?」
と心配される方は少なくありません。
しかし、薬を始めるかどうかは血圧の数字だけで決まるものではありません。
実際には、
- 診察室の血圧
- 家庭血圧
- 血圧の高さ
- 年齢
- 糖尿病の有無
- 腎臓病の有無
- 心臓病や脳卒中の既往
- その他の心血管病のリスク
- 生活習慣
などを総合的に判断します。
生活習慣を改善しても血圧が十分に下がらない場合や、もともとの血圧が高い場合、合併症のリスクが高い場合には、薬による治療が必要になります。
薬物治療を開始しても、1種類の薬だけで目標血圧に届かないことは珍しくありません。
その場合には、薬の量を調整したり、作用の異なる降圧薬を組み合わせたりしながら目標血圧を目指します。
大切なのは、薬を飲むこと自体ではなく、
将来の脳卒中・心臓病・腎臓病などを防ぐために、血圧を適切な範囲に管理すること
です。
⑥こんな方は一度ご相談ください
次のような方は、一度医療機関で血圧について相談することをおすすめします。
- 健康診断で140/90mmHg以上を指摘された
- 家庭血圧が135/85mmHg以上で続いている
- 以前から「血圧が高め」と言われている
- 血圧の薬を飲んでいるが、130/80mmHg以上の日が多い
- 血圧が日によって大きく変動する
- 糖尿病や腎臓病がある
- 薬を飲んでいるのに血圧がなかなか下がらない
- 血圧の薬について相談したい
一度だけ血圧が高かったからといって、すぐに高血圧と診断されるわけではありません。
一方で、「症状がないから大丈夫」と高い血圧を長期間放置することもおすすめできません。
よくある質問
Q.130/80mmHgを超えたら高血圧ですか?
いいえ。
高血圧の診断基準は、
診察室血圧140/90mmHg以上
家庭血圧135/85mmHg以上
で、2025年のガイドラインでも変わっていません。
130/80mmHg未満は、高血圧と診断された方が治療によって目指す降圧目標です。
Q.家庭血圧が125/75mmHgを超えています。薬を飲んだ方がいいですか?
それだけで薬が必要とは限りません。
125/75mmHgは高血圧治療中の方が目指す家庭血圧の目標値であり、高血圧の診断基準は135/85mmHg以上です。
薬が必要かどうかは、血圧の程度だけでなく、年齢や糖尿病・腎臓病などの有無、心血管病のリスクなどを含めて判断します。
Q.血圧を下げるために、まず何をすればいいですか?
まずおすすめしたいのは、家庭血圧を測る習慣をつけることです。
自分の普段の血圧を把握したうえで、
- 減塩
- 適正体重
- 運動
- 節酒
- 禁煙
- 十分な睡眠
など、できるところから生活習慣を見直していきましょう。
Q.血圧の薬は一度飲み始めたら一生飲まなければなりませんか?
必ずしも「一度飲み始めたら一生やめられない」という意味ではありません。
体重減少や減塩、運動などによって血圧が改善し、薬を減量できる方もいます。
一方、体質や年齢などの影響で、生活習慣に十分気をつけていても薬が必要な方もいます。
自己判断で中止するのではなく、家庭血圧を確認しながら主治医と相談することが大切です。
高血圧は「症状がないうち」の管理が大切です
高血圧は、自覚症状がほとんどないまま、長い年月をかけて血管に負担をかけていく病気です。
そのため、
「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がない今から血圧を管理する」
ことが、将来の脳卒中・心臓病・腎臓病を予防するうえで大切です。
小嶋内科では、診察室の血圧だけでなく、
- 家庭血圧
- 健康診断の結果
- 血液検査
- 生活習慣
- 糖尿病や腎臓病などの合併症
- 現在服用している薬
などを確認し、一人ひとりに合わせて高血圧の治療方針をご提案しています。
「健診で血圧が高いと言われた」
「自宅で測ると血圧が高い」
「薬を飲んでいるのになかなか血圧が下がらない」
「この血圧で薬が必要なのか知りたい」
といったことでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
有田町をはじめ、伊万里市・武雄市・佐世保市・波佐見町など周辺地域の皆さまの高血圧診療にも対応しています。
参考
日本高血圧学会
「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
