新型コロナウイルスワクチンについて最新のお話
- 2024年9月26日
- 予防接種
2024年10月1日より新型コロナウイルスの定期接種が始まります。9月に入り、対象の方に新型コロナワクチンの定期接種が始まることをお伝えしていますが、接種を迷われている方も見受けられました。普段の診察中には、コロナワクチン接種について詳しく説明する時間がなかなかありませんので、このコラムの中で接種する目的や期待できる効果について説明したいと思います。
新型コロナワクチンは2021年の導入以降、国が法律で定める「臨時接種」という緊急時の扱いで、対象者全員に公費による無料接種が行われてきました。この臨時接種は2024年3月末で終了し、2024年4月以降は高齢者だけを対象にした「定期接種」となりました。この定期接種での公費による負担は金額の一部であり、対象者もある程度の自己負担額 (有田町・伊万里市は2,000円)が発生します。
◉新型コロナウイルスウイルスワクチンを接種する目的
①重症化しやすい方 (65歳以上の高齢者・基礎疾患がある人)の重症化・死亡率を減らす。
②新型コロナウイルス感染による後遺症を減らす、軽くする。
③新型コロナウイルスに感染しにくくする。
2021年に新型コロナワクチンが初めて導入された当初は、感染そのものを予防する効果が95%、感染した場合でも重症化(入院や死亡)を予防する効果が90%以上と、劇的な効果を認めました。つまり当初は、③の感染予防効果が非常に高かったのです。しかしながら、新型コロナウイルスは他のウイルスとは違い短期間で変異を繰り返すため、せっかく開発・製造したワクチンが効きづらくなるほど姿形を変えてしまいます。そのため、現在ではワクチンの感染を予防する効果は以前ほど高くはなく、感染予防効果は3ヶ月程度しか続きません。
一方で、ウイルスが変異しても、ワクチンによる重症化予防効果はあまり低下しません。新型コロナウイルスの変異とはウイルスの表面の形が一部変わることですが、感染予防につながる部分の形はどんどん変化するのに対し、重症化予防につながる部分の形はそれほど変わりません。これは新型コロナウイルスの変異の特徴です。そのため年に1回程度、最新改良版のワクチンを接種しておけば、多少変異が進んでも重症化の予防効果は十分期待できます。
現在流行しているオミクロン株は、それ以前の変異株に比べると肺炎になる確率が低くなり、特に若くて健康な方には殆ど肺炎を起こさなくなったため、若くて健康な方にとっては、当初ほどは怖いウイルスではなくなりました。しかし、感染すると若い人でもLong-COVIDと言われるコロナ後遺症を残したり、小児では、脳症や川崎病のような重い合併症が出ることも稀にあります。当院には咳でお困りの方が多数受診されますが、最近特に多いのは新型コロナウイルスに感染後に咳が止まらないため受診するケースです。この場合、診察の結果、ほぼ全ての方が新型コロナウイルス感染を契機に“ぜん息”を発症されています。決して新型コロナは「風邪と同じになった」わけではありません。そして、高齢者や基礎疾患のある方は、オミクロン株でも引き続き肺炎を起こしたり、感染が引き金で基礎疾患が悪くなったりして、年間30,000人の方が亡くなられています(インフルエンザの10倍以上)。高齢者にとってはやはり「命に関わる病気」のままです。
これまでお伝えしたような、ウイルス自体の変異とそれに伴うワクチン効果の変化から、新型コロナワクチン接種に対する日本の戦略は大きく変わりました。すなわち、「多くの方に接種してもらって、感染そのものを大きく減らそう」という発想から、「命に関わりやすい方に絞って接種してもらって、重症化を減らそう」という発想に転換したのです。
◉当院で接種可能な新型コロナウイルスワクチン
①ファイザー社製ワクチン(コミナティ):メッセンジャーRNAワクチン
世界で最初に開発された新型コロナワクチンであり、世界で (日本でも) 最も接種されたワクチンです。接種された人数が多いため、その有効性や安全性についても最も確認されたワクチンとなります。当院では、このコミナティの接種をメインで行っていきます。
②武田薬品製ワクチン(ヌバキソビッド):不活化ワクチン
今までのファイザー社製のメッセンジャーRNAワクチンとは違い、従来型のワクチンとなります。インフルエンザワクチンと同じ不活化ワクチンです。インフルエンザワクチンと同様のタイプのワクチンですので、副反応がメッセンジャーRNAワクチンよりも軽く済むことがわかっています。新型コロナワクチンの接種を迷っておられる方の中にはファイザーやモデルナ製のワクチンで発熱・倦怠感が出て苦しんだ方や新しい製法のワクチンを接種するのが怖いと思っている方が多い印象です。そのような方はぜひ、この不活化ワクチンの接種をご検討ください。
◉今後の新型コロナウイルスワクチン接種の考え方
定期接種の対象者(65歳以上の高齢者、および60-64歳で心臓・肺・腎臓・免疫に障害のある方)には引き続き積極的に接種を受けていただき、重症化を予防して命を守ってください。それ以外の年齢の方でも、基礎疾患があって重症化が心配される場合には、任意接種で積極的に受けてください。
若くて健康な方は、接種の目的は重症化予防よりも感染予防がメインとなるでしょうが、感染予防効果は、接種してから数ヶ月間、感染する確率がおおよそ半分に下がる程度だと理解してください。残念ながら、以前の95%のような高い予防効果はなく、接種しても感染する可能性はある程度残り、感染予防効果自体も3ヶ月程度で消えてしまいます。そのため、例えば受験などの大事な行事の1ヶ月ほど前に接種するなど検討してみてはどうでしょうか。