どちらの帯状疱疹ワクチンを接種すればいいの?
- 2025年6月10日
- 予防接種
2025年4月から2種類の帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始となっています。
補助を受けられる対象者には自治体から予診票が郵送されていると思いますが、その対象者の方から“どちらのワクチンがいいの?”と、問い合わせを受けることが増えてきました。そこで、今回は帯状疱疹とはどんな病気なのか、そして2種類の帯状疱疹ワクチンについて説明したいと思います。
⚫️帯状疱疹とは
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって起こる皮膚の病気です。子どもの頃にかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスは、治った後も体内に潜伏し続け、加齢や免疫機能の低下などをきっかけに再び活動を始めることで皮膚に痛みを伴う発疹があらわれることがあります。これが帯状疱疹です。
⚫️帯状疱疹の症状
体の左右どちらか一方にピリピリとした痛みやかゆみがあらわれ、その部分に赤い発疹や水ぶくれが出てきます。痛みは徐々に増していき、夜眠れないほどの痛みになる場合もあります。帯状疱疹の多くは胸やお腹、背中、腰などの上半身にあらわれますが、顔や目、頭などにあらわれることもあります。
⚫️帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬の内服や点滴が中心となり、痛みを和らげるために鎮痛剤を併用することも多いです。
⚫️帯状疱疹の合併症
皮膚の症状が治った後も、痛みが残ることがあり、3ヶ月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼びます。50歳以上で帯状疱疹を発症した人の約20%がPNHになるといわれており、80歳以上の方では約30%とより高くなります。PNHでは「焼けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」うずくような痛み、そして、衣服が擦れるなどの軽い接触だけでも痛みがみられ、長期間にわたり睡眠や日常生活に支障をきたすこともあります。
また、目や耳に帯状疱疹を発症すると、めまいや耳鳴りなどの合併症が見られることがあり、重症化すると顔面神経まひや難聴、視力低下などをきたす場合もあります。
⚫️帯状疱疹になりやすい人は?
帯状疱疹の発症には年齢が大きくかかわり、高齢になると発症しやすくなります。日本人では50歳以上で発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。
さらに、糖尿病やがん、膠原病などの自己免疫疾患、腎不全、高血圧などの基礎疾患がある人では、帯状疱疹の発症率は高くなることがわかっています。
また、一度帯状疱疹を発症した人でも、約6%の方が再発するとされています。
⚫️帯状疱疹ワクチンを接種する目的
帯状疱疹を接種する目的は大きく分けて以下の3つです。
・帯状疱疹の発症を予防する
・帯状疱疹の重症化を予防する
・痛みなどの後遺症を予防する
⚫️帯状疱疹ワクチンの種類について
今回の定期接種では「ビケン」と「シングリックス」という2種類の帯状疱疹ワクチンが使用されています。
「ビケン」は生ワクチンで、弱毒化された生きたウイルスを使用しています。もともとは水ぼうそう予防のワクチンとして開発されたものですが、帯状疱疹の予防にも効果があることがわかり、現在使用されています。
「シングリックス」は不活化ワクチンといわれるもので、ウイルスの一部の成分と免疫反応を高める物質を組み合わせており、生きたウイルスは含まれていません
「ビケン」は1回の接種で済みますが、「シングリックス」は2回の接種が必要です。2回目は1回目から2〜6ヶ月後に接種します。
⚫️効果と持続期間について
「生ワクチン(ビケン)」の帯状疱疹の予防効果は、接種1年後で約60%、5年後で約40%程度とされています。
一方で「不活化ワクチン(シングリックス)」の予防効果は1年後、5年後ともに90%以上と非常に高く、また10年後でも70%以上と言われており、「ビケン」と比べて非常に効果が高く長続きするのが特徴です。
また、帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果は「ビケン」では約60%ですが、「シングリックス」はPHNの予防効果も約90%以上と高いです。
⚫️接種する場合の注意点と副反応について
「ビケン」は生ワクチンであるため、免疫不全状態の方や妊婦、ステロイド長期服用中の方などは接種できません。また他の生ワクチンとの接種に27日以上の間隔をあける必要があります。
2つのワクチンに共通する副反応としては接種部位の痛みや赤み、かゆみなどがあります。また「シングリックス」は「ビケン」と比べて発熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感などの副反応がやや多く認められます。
⚫️接種費用(有田町・伊万里市の場合)
「生ワクチン(ビケン)」 2,500円
「不活化ワクチン(シングリックス)」 1回6,500円 2回接種するので計13,000円
以上をまとめると「生ワクチン(ビケン)」と比較して「不活化ワクチン(シングリックス)」のメリットとしては発症予防効果や合併症の予防効果が高く、持続期間も長いですが、デメリットとして2回接種する必要があること、副反応がやや高頻度であること、金額が高いことが挙げられます。
最後に、「結局どちらのワクチンを接種すればいいの」の質問に対しては、何を優先するかで決めていただくのが良いかと思います。
より高い予防効果や長期間の持続効果を希望する方は「不活化ワクチン(シングリックス)」、接種回数を1回で済ませたい方、安く済ませたい方、副反応を極力避けたい方は「生ワクチン(ビケン)」をご検討ください。
当院でも現在、帯状疱疹ワクチンの接種を行っております。ご希望の方はお電話または直接受付でご予約ください。